研究概要 |
1992年度の国際学術調査に於てウガンダに滞在した際,ザイール人研究者と接触しザイール東部のルイロ(LWI)に設置してあった広帯域地震計の故障部品の取り替えを依頼し,不調になっていた地震計の回復に努めた.1993年2月に郵送されてきたデータでその動作を確認したが,結果を出すにはもう少し時間を要する.従って,昨年と同様にWWSSNとGDSNの記録を用いてSmKS,Sdiff波の解析を行いグローバルな立場からマントルとコアの不均質性を明らかにした.主な結果を要約すると,(1)コア内の新しいP波速度モデル(KTH)を提案した.それによると,コアの表面の速度は8.016km/secである.また,コア最上部200kmでは従来のモデルに比べて0.11km/sec速い.また,深さ100〜200kmでの不均質係数は1を越え安定な成層した状態にあることが示された.(2)インド洋から中央アジア,北西太平洋直下のマントル最下部300kmのS波速度はPREMモデルより平均1〜2%速い。 アフリカ大陸の開発途上国では標準時報の受信が困難な地域が多く,それらの地域での地震観測に於ては,刻時精度が不十分で観測の質が低下する.これを克服するために時刻精度を如何なる状況・地域でも高精度に保つことの出来るGPS信号を利用したデジタル時計を安価に作製することに成功した.刻時精度は常時2msec以内であることが確認された.今後の海外の観測に役立つ事が期待される. ザイールの政情が回復せず入国が不可能な状態が続いたため,同国のLWI及びBNZに設置してある広帯域地震計のデータの回収は本年度内に出来なかった.この為,当初の目的は果たせなかったが,既存の観測網のデータ解析から深部構造について上記の様な新しい知見を得ることができ,本研究の目的は十分に達成できた.次年度以降もアフリカでの国際学術調査が予定されているので同国の安定を待ちデータの全面的な回収に努めたい.
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