研究概要 |
アフリカ大陸は大地溝帯の存在やホットスポットの集中度が高いという特徴がある。本研究はこれらの特徴の由来を観測面から明らかにする目的で本研究は計画された。1990年7月にザイールの東部のルイロ(LWI)に設置したと同型のCMG-3型広帯地震計を1991年9月に首都キンシャサの郊外のビンザ(BNZ)に設置した。しかし、その直後にザイールの首都をはじめ各地で暴動が発生し政情が不安定で入国ができないためデータの回収が行えない状態続いている。従って,独自の観測データに基づく解析は不可能と判断した。 そこで,全世界に展開されいてるGDSNやWWSSNの地震データを利用してグローバルな見地に立ってアフリカを含むマントルとコアの深部構造の研究を行った。SmKS波やSdiff波を用いた一連の解析から次のことが明らかになった。(1)アフリカ大陸の中央部の直下のコア・マントル境界(CMB)に盛り上がりが見られ,その地域のQ値は周辺に較べて小さい。(2)コア最上部の地震波速度にはn=1モードの不均質がある。(3)アフリカを含むA半球のコア最上部のP波速度は平均場より0.3%速く,逆に太平洋を含むP半球は0.3%遅い。この差異はA半球のコア表面の温度ががP半球に較べて数10mケルビン高いことを示唆する。この結果はアフリカの直下のCMBの状態を考察する上で重要である。(4)コア最上部は化学的に成層化している可能性が見いだされた。(5)コア上部1000kmまでのP速波度の新しいモデルを提案した。(6)インド洋から中央アジア,および北西太平洋直下のマントル最下部320kmのS波速度はPREMより1〜2%速い。(7)開発途上国の様に標準時報の利用因難な地域でも常時2msecの精度を持つGPS信号を利用した安価な地震観測の用デジタル時計を開発した。ザイールの政情不安で現地での地震観測については初期の目的を果たせなかったが,上記に示した結果は従来知られていない新しい知見であり,地球内部構造の研究に寄与するものである。
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