本年度は前年度に引き続き伊豆半島東部の網代、伊豆半島西部の内浦および三浦半島の油壺観測所においてデータの蓄積を続けている。網代においては水管傾斜計、油壺においてはルーチンの水管傾斜計と伸縮計の観測によるデータが良好に記録されている。そのうえ両観測点には最近開発した平行二枚バネ式可搬型傾斜計も設置し、比較観測および異なる測定データを得ている。また三浦半島の長坂観測点には三成分ボアホール歪計を埋設し良好なデータが記録されている。さらに伊豆半島の河津観測点にも今年度内に三成分ボアホール歪計を埋設し、データ収集を開始する予定である。観測データの処理解析も順調に進んでいる。上記のデータはすべて公衆電話回線により、東京の地震研究所に伝送されてデータベースに記憶されている。 水準測量データの解析に関しては解析を継続している。群発地震はしばらく発生していなかったが、1991年12月に発生し筆者が主張している「伊豆東海岸の群発地震発生と異常隆起のピークの位置が関連している」ことがあらためて明らかになった。 また1993年1月10日から始まった川奈沖の群発地震は震源の深さ12kmからその後浅くなり、終息したが伊豆の活動は伊東沖海底噴火により完全に終わったのではなくまだそのポテンシャルを有していることが明らかになった。群発地震発生前後のデータは良好に記録されており今後解析が進むとともに興味ある結果の得られることが期待されている。 なおこの研究のために開発した平行二枚バネ式可搬型傾斜計は安価で取扱いが容易であり、設置も簡単であり現在5カ所以上の点で観測に使用されており良好なデータが得られている。この研究により蓄積されたデータ、解析結果および計器に関連する成果により今後一層観測点の増設を容易にし、異常地殻活動と関連したデータを得ることが期待される。
|