研究課題/領域番号 |
03452059
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
若土 正暁 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60002101)
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研究分担者 |
藤吉 康志 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助教授 (40142749)
大島 慶一郎 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (30185251)
竹内 謙介 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (00107450)
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キーワード | 南大洋 / 巨大海洋渦 / 海氷域変動 / 南極底層水 / ポリニヤ / 海洋深層大循環 / 地球気候システム / 衛星情報 |
研究概要 |
南緯65゚付近を、南極大陸を取り囲むように“Antarctic Divergence"と呼ばれる発散域が分布していることは古くから知られている。そこでは、Ekman transportによる発散にともない高温・高塩の深層水の湧昇が起っており、オキアミの豊漁場としても知られている。従来から海洋生態学的興味が南極発散域の研究テーマの中心であったが、本研究によって、発散域における大気ー海氷ー海洋相互作用が、南半球の気候システムの中で重要であることが示唆された。本研究で以下のことが明らかになった。南極大陸沿岸近くでは低気圧活動が盛んなため、発散・湧昇域が出現し、帯状に南極大陸を取り囲む。そこでは、湧昇によって、深層の熱と塩が表層まで運ばれるとともに、沿岸の低温水の沈降によって、低気圧性海洋渦が生成し、維持される。同時に、表層高塩分水の存在は、秋から冬にかけての大気冷却にともなうdeep convectionを生み結果的に上向きの熱・塩供給が一層促進される。この表層への熱輸送によって、海氷のcoveringが抑制され、ポリニヤを形成し、維持されるので、そこでは大気ー海洋間の活発な熱・物質交換が行なわれる。このように、南極発散域では、水平方向の沿岸ー外洋間だけでなく、鉛直方向の大気ー海洋深層間の熱・物質交換が盛んに起っているところであり、それに直接介在しているのが、列をなして並んで存在している海洋渦である。世界の3大洋である太平洋、大西洋、インド洋は、南大洋を介して相互に交流し合っている。また、深層水の源流域の1つであることなどから、南大洋が世界の海洋大循環において重要な役割を果していることは明らかである。巨大な氷の塊である南極大陸を極側にもち、それをぐるりと取り囲み、世界の3大洋と直接交流をもつ南大洋、しかもそこは冬には海氷で広く覆われてしまう。今後はこれらの相互作用が最も顕著に表現されているはずの南極発散域における物理過程の理解をめざす。
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