研究概要 |
金属ー絶縁体転移は,電気伝導を担う3d電子の持つ強い局在性が引き金となって生じるといわれ,電子相関,電子ー格子相互作用などの多体効果を生み出す原因となっている.この多体効果については理論的にも未知の部分が多く,遷移金属酸化物が多体効果を一般的に理解することが高温超伝導発現機構の解明に不可欠であると思われる.我々はスピネル型酸化物Li_<1+x>Ti_<2-x>O_4,Li_<1-x>Mg_xV_2O_4を研究対象に選び,試料作製およびその基礎物性を測定解析した.この系を選択した理由として,(a)LiTi_2O_4は3d遷移金属酸化物では銅酸化物に次ぐ高いTc=13.7Kの超伝導体であり,LiV_2O_4は低抗率1mΩcm程度の伝導体である;(b)キャリア濃度を制御して金属ー絶縁体転移を示す;(c)銅酸化物系と同様に磁性絶縁体母物質が存在するなどがあげられる.以下に本研究によって得られた知見を列挙する. 1.Hall係数の測定に初めて成功し,その大きさ・温度依存性などからLiTi_2O_4は基本的にはバンド計算の予想する金属であることがわかった.しかしながら,TiをLiで置換した試料におけるHall係数の変化はバンド計算からは説明できず,複雑な金属ー絶縁体転移の機構が存在することを暗示している. 2.LiV_2O_4は局在スピンを持ったまま伝導性を示す酸化物であり,輸送現象・磁気的性質・光学物性などの点で銅酸化物ともLiTi_2O_4とも異なっていることが明らかになった.特に,新しい試料作製法を見出したこと,光学スペクトルを初めて測定したことが大きな研究成果である. 3.Ti系,V系ともほぼ4eV以上の高エネルギ-領域ではバンド計算の結果を再現することが,今回初めて測定された真空紫外反射,電子エネルギ-スペクトルの解析結果から明らかになった.
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