結晶表面の欠陥の状態を研究するために新たに提案した「表面ブロッキング法」の実験技術を開発し、これを用いて表面極近傍におけるイオンのエネルギ-損失の測定を行った。またこれと平行して、結晶表面におけるイオンの斜入射散乱により表面状態の評価を行う手法を確立した。 研究はまず4MVヴァンデグラ-フ加速器からのHeイオンを結晶に照射し、表面原子によって表面にほぼ平行に散乱されたイオンを半導体検出器によって検出し、表面ブロッキングを受けたイオンの収率とエネルギ-損失を測定した。これにより表面ブロッキングを受けたイオンが表面原子配列に大きく影響されることを示し、「表面ブロッキング法」の基礎を確立した。その際に測定した表面ブロッキングイオンのエネルギ-損失から、表面極近傍の阻止能を評価出来ることを示した。(Phys.Lett.A in press)さらに、表面ブロッキングイオンのエネルギ-スペクトルを高分解能で測定するために、斜入射型90°扇形磁場エネルギ-分析器を設計し製作した。これを用いて表面の各原子層から散乱されたイオンを分離して測定することに成功した。この分析器を用いて、結晶表面の欠陥の状態を高精度に測定する新技術を開発中である。 これらの研究と平行して、高速イオンの斜入射散乱を用いて、テルル化錫結晶上の鉛カルコゲナイドのエピタキシャル成長初期の段階で、結晶表面に大きな表面歪が導入されていることを見いだした。この研究により、斜入射イオン散乱による表面及びエピタキシ-薄膜の新しい評価法を確立した。(応用物理第60巻p.1207ー1213)
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