研究概要 |
昨年度製作した斜入射型90゚扇形磁場エネルギー分析器を使用して、0.5MeVHeイオンをSnTe(001)表面に入射したときの表面ブロッキングイオンのエネルギー損失の測定を行った。その結果、これまで鏡面反射法で求めることができなかった表面ごく近傍の阻止能を評価することができた。また、得られた表面阻止能を用いて、表面ブロッキングイオンのエネルギー損失を計算機シミュレーションにより計算したところ、表面ステップが存在すると表面ブロッキングイオンのエネルギー損失が小さくなることを見いだした。これを利用して表面ステップ密度を評価することが可能であることを示した。 高分解能斜入射型90゚扇形磁場分析器を用いて、同じく0.5MeVHeイオンをSnTe(001)表面に入射したときの表面ブロッキングイオンの荷電分布を測定した。この分析器により、表面原子で散乱されたイオンだけを選び出して測定することができた。この結果、表面近傍における高速イオンの電子移行反応を調べることができた。(Phys.Rev.Lett.68(1992)3797) 高速イオンの斜入射散乱法に適した小型の高分解能電磁石エネルギー分析器を設計、製作した。これを用いて、表面チャネリングイオンのエネルギー損失を測定して、表面阻止能のうちで、表面電子の集団励起に対応する部分を実験的に求めることができた。(Phys.Rev.A,Vo1.47,No.3印刷中)また、HeH^+分子イオンの単結晶表面における斜入射散乱の研究から、従来理論的に研究されていた表面ウェイクの存在を実験的に示すことができた。(J.Phys.Soc.Jpn.61(1992)3535)
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