計算機トモグラフィの技術の産業応用の基礎となる画像再構成の実用計算法の研究において、データに含まれ、あるいは計算過程で混入する変動成分と再構成画像の画質との関係を解明した。とくに、最も標準的再構成法であるフィルター補正逆投影法において、各演算段階での変動成分伝播の様子を明かにすることができた。この結果、再構成計算の演算処理の線形性にもかかわらず有限精度計算では演算処理の順序の影響が明瞭に表われ、顕著な非線形性を示すことが明かとなった。これにより実際の計算で制限されたビット数を持ったA-D変換器を用いた場合の最適なアルゴリズムを得るための方針を決定できた。 また、CTの産業応用で被写体の形状の多様性のためとくに問題となる不完全投影再構成において、画像の基本的性質に関する制約条件の有用性について結論を得ることができた。とくに、画像分布あるいはそのフーリエ変換関数が解析的であること、およびこれらの関数を解析的に延長してデータを形成することの正当性について明らかにするため系統的なシミュレーション計算を実行した。この結果、解析性を利用する場合において、データ精度と再構成画像の画質の関係を明らかにすることができた。 一方、磁気共鳴映像法(MRI)も含め、標準的なX線CT以外で産業用において利用できる種々の形式のCTの画像再構成問題について多くの知見を得ることができた。とくに、熱中性子線を媒体とする中性子線CTに関して、定量的な画像解析を行ない、この映像形成システムに固有の諸特性を明らかにした。さらに、この中性子線CTを含め、透過型CTに一般に認められる放射線の線質硬化に基づく偽信号に対する修正方法を見出し、具体的に実際の計測システムより得られたデータに対して適用し、その有効性を確認することができた。
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