本研究は宇宙ステーション等の宇宙構造物の防護構造に関するものである。ここでの防護とは飛来する人工破片(デブリス)や微小隕石からのものを指している。本研究の具体的な内容はプラズマガンによる1mm以下の小型デブリスのモデルバンパーへの衝突実験と計算機シミュレーションによる1〜10mmのデブリス衝突に対する知見を得ることである。前者については、平成3年度に完成させたヘリウムガスプラズマによる1mm以下の微小デブリのモデルのバンパーに対する衝突実験を行った。デブリのモデルとしてパイレックスガラス小球を用いた。実験結果を総括すると、バンパー材として使用されることが検討されている比較的軽量高強度材については、秒速8km以上の超高速衝突によって生じるバンパーの貫通破片がガス状又は液状に分散して、構造体の主壁に衝突するため損傷が小さいことが分かった。防護上、困難な速度領域は3〜8km/sの中速領域であり、貫通によって生じたバンパーの固体破片が主壁に衝突するため損傷が大きいことが明らかになった。中速領域では、固体破片の発生を避けることができないので、いかにて破片を微細化するかが今後の課題である。この解決の一つの方向として、セラミックスと金属板との組み合わせによる複合バンパーの可能性を実験的に示した。実験を行った組み合わせの中では前部に窒化アルミニウム、後部にアルミニウム合金を貼り合わせたバンパー板が優れていることが明らかになった。金属とセラミックスの複合バンパーについて、計算機シミュレーションによる解析を行い、直径10mmまでのデブリス衝突からの防護の有効性について調べた。セラミックスの衝撃圧縮挙動についての情報が乏しいため、仮定するパラメーターの大きさによって、結果が著しく変動することが明らかになった。信頼性の高いパラメーターの設定は今後の研究の大きな課題である。
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