研究概要 |
1.平成3年度に,凸物体まわりの希薄気体中では,気体の速度分布関数が不連続を持つことを指摘した.この不連続は凸物体まわりの気体という一般的な事柄であるので,本年度はさらに解析を進め,その性質,特にこの不連続が巨視的変数にはKnudsen層底部に第二境界層となって現れ,Knudsen層さらにその外流(すべり境界条件)へ与える影響,を明らかにすると共に,具体的問題を数値解析する際にこの不連続を処理する方法を提案した.この方法は次に述べる2,4において応用し,その有用性を確かめた. 2.球状凝縮相から真空中への定常な蒸発流をKnudsen数の全域にわたって数値解析し,この流れの全容を明らかにした.解析にあたっては1.で開発した方法を採用し,気体分子の速度分布関数をその不連続まで含めて精密に求め,三次元物体からの膨張流の特徴ある振舞を示した.これより,古くからの問題である凍結温度の正確な振舞が明らかになった.現在さらに研究を発展させ,二次元物体の代表である円柱から真空への定常な蒸発流の解析を進めている.球の場合と根本的に異なった振舞が見られることが明らかになった. 3.熱応力すべり係数を,Maxwell型境界条件の下で剛体球Boltzmann方程式を用いて解析し,さきに申請者が簡便なBKW方程式によって示した負の熱泳動の存在を明確にした. 4.一様流中の球のまわりの流れ(抗力問題)および一様温度勾配を持つ気体中の球のまわりに誘起される流れ(熱流力問題)を剛体球分子Boltzmann方程式およびBKW方程式の両者によってKnudsen数の全域にわたって解析し,これらの問題の全容を明らかにした. 5.平面衝撃波の気体論による精密な解析を行った.
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