| 研究概要 |
本研究の成果は次のように大別される.それに従って概要を述べる.
A.蒸発・凝縮を伴う流れの気体論的研究
古くから関心が持たれていたが未解決であった,円柱状あるいは球状凝縮相から真空中への蒸発流および円柱状凝縮相からその蒸気で満された空間への蒸発流を気体論を基にKnudsen数の全域にわたって解析しその全容を明らかにした.また揮発性粒子に対する抗力問題の解析も行った.
B.物体をすぎる流れの気体論的研究
Eで明らかになった速度分布関数の不連続,複雑な衝突積分,および無限領域問題等物体をすぎる流れの数値解析上の問題点を解明し,その結果を利用して物体を過ぎるいろいろな流れの問題を全Knudsen数に汎って解析した.
C.温度場によって誘起される希薄気体の流れ
希薄気体においては,外力の働いていない系において温度場が原因になって流れが誘起されることがある.本研究では古くから関心を持たれてきた球状粒子の熱泳動問題を標準型Boltzmann方程式を用いて全Knudsen数に汎って解析しその全容を明らかにした.またこの現象で重要な役目をはたす熱ほふく流の実験的験証を行った.
D.衝撃波の気体論的研究
気体論的取扱が不可欠で,非線形問題を正面から取り組まなければならない平面衝撃波の内部構造と円柱からの蒸発流に発生する衝撃波の解析を行い,精密な結果を導びいた.
E.Boltzmann方程式の解の基本的性質に関する研究
Boltzmann方程式の解の種々の基本的性質を導びいた.すなわち,凸物体のまわりの気体中においては速度分布関数が不連続を持つことおよびこの不連続とKnudsen層底部のS層との関係;高度に希薄な気体における定常解の数学的性質;一様な平衡状態からわずかにずれた系においても非線形効果が重要になることがあることおよびその条件と具体例を示した.
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