研究概要 |
本年度は,前年度の研究成果を踏まえ,また前年度に開発した装置を用いて,各種難削材料に対する超精密超音波振動切削を試みた.その結果得られた成果は,以下のようにまとめることができる. 1. 鉄系材料の超音波振動切削加工 焼入れ処理を施した後の金型鋼に対して,軟質金属の場合に匹敵する約0.03μm Rmax前後の仕上面を得ることができた.また,切削距離1600mに到るまで,共に0.1μm Rmax以下の鏡面を維持することができた.さらに切削抵抗が超音波振動切削によって大幅に減少することを確認し,通常切削に対して加工精度の点でも非常に有利であることを示した. 2. ガラスの延性モード超音波振動切削加工 ガラスの延性モード切削を行う場合,通常切削より超音波振動切削の方が優れていることを明らかにした.具体的には,工具を超音波振動させることにより,延性-脆性臨界切込み量が大きくなること,また工具刃先形状の加工溝への転写性も大幅に向上することを確認した.そして延性モード超音波振動切削により,ソーダライムガラスと光学ガラスの超精密平面加工を試みた結果,仕上げ面あらさ0.03-0.06μm Rmaxの透明な面を得ることができた. 3. 種々の硬脆材料の超音波振動切削加工 ガラス以外の硬脆材料(ニオブ酸リチウム,単結晶シリコン,ジルコニア)に対しては,本研究の範囲内では超音波振動切削による大きな利点を見いだすことはできなかった. 以上のように,従来不可能であった鋼およびガラスの超精密切削加工を,超音波振動切削を適用することにより実現することができた.しかし,この場合に得られた振動切削効果が,必ずしも全ての材料に対して得られるものではないことも同時に明かとなった.
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