研究概要 |
型を用いる成形問題では,型と被加工材料の接触条件が重要になる。熱負荷の加わる成形では摩擦条件と接触熱抵抗の評価が必要となる。摩擦抵抗の大小は成形荷重や圧力に,熱抵抗の大小は温度分布に主に影響する。これらの抵抗は,界面を構成する材料,表面粗さ,被加工材の粗さの突起が型面で押し潰れて真実接触している面の割合(接触率=真実接触面積/見かけの接触面積)と分布,接触界面の粗さの谷部に閉じこめられている物質によってきまる。 超音波の反射特性は,上記の諸因子と複合的に関係しているが,特に接触率との対応が直接的である。そこで,本研究では超音波探触子を用いて工具と被加工材料の接触界面における反射強度を計測し,接触している材料の特性変化,接触状態の変化を求める試みを行った。接触前の成形面での反射強度Ioと接触中(成形途上)の反射強度Iの比である相対反射強度を利用することによって,接触率の評価あるいは被加工材の離型状態や不均一接触状態の評価が可能であることが分かった。また,相対反射強度が界面での総合接触熱抵抗の値とよい相関があることが認められた。 超音波の反射強度および音速は,エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の場合には,硬化反応とともに変化するので樹脂の凝固状態やガラス転移点の移行時期を捕らえ得るはずである。反射強度の変化からはほぼ硬化反応の進展と離型の状態を評価できそうであることが確認できた。また離型が生じない場合には音速の評価から樹脂内部の硬化反応の推移を捕らえることができる。この様に,新しく提案した超音波を利用して接触状態をインプロセスで評価する方法は,高品質な成形品を加工するための最適条件の決定に有効な道具になると考える。
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