研究概要 |
前年度に行った研究の結果より波状壁を持ったクエット型乱流における非平衡乱流のメカニズムを解明するためには,まずクエット・ポアズイユ型の乱流を解明する必要があるという結論を得た.そこで本年度はこの問題の解明を行った.この流れでは局所平衡が成立している.そこでレイノルズ数R_e^*=hu_*/ν,せん断応力勾配dτ/dyを独立のパラメータに選び,速度分布に及ぼすこれらの効果を考察し,以下の結論を得た. (1)壁近傍においては,よく周知されているように壁法則U^+=f(y^+)が成立する.しかし,せん断応力勾配が強く,μ^<-1>=(ν・dτ/dy)/(ρu_*^3)が大きくなると,U^+=f(y^+)の関数形は,U^+=f(y^+,μ^<-1>)のように修正されなければならない.これまでの研究ではVan Driest係数A^+(Van Driest damping factor)及び対数則の付加定数Bが,チャンネル流や平板乱流境界層の低レイノルズ数領域では,順圧(μ^<-1><0)又は逆圧(μ^<-1>>0)に対応してR_e^*又はμ^<-1>の変化に対し増大又は低下することが知られていた.しかし,この傾向はR_e^*の影響なのか,あるいはμ^<-1>の影響なのかについての詳細は明かでなかったが,著者らは上記の点を定量的に明らかにした. (2)dτ/dy>0の場合に現れる1/2乗則速度分布U^+=K_1[y(dτ/dy)/(ρu_*^2)]^<1/2>+K_2の定数K_1は,これまでβ〓ρu_*^2h/(dτ/dy)のみの関数として与えられていた.しかし,低レイノルズ数の流れではK_1の値も低下することから,R_e^*による影響を明らかにした. (3)乱流コア部における速度欠損則の分布は流れがポアズイユ型であるか,クエット型であるかによってのみ決まり,レイノルズ数,せん断応力勾配の影響を受けないことが明らかになった.ここでクエット型とはβ>-0.5,ポアズイユ型とはβ<-0.5である.
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