研究概要 |
地球温暖化およびオゾン層の破壊をひきおこす可能性の高いN_2Oが、石炭燃焼場から燃焼温度によってはかなりの濃度で生成している危険性があり、またアンモニア注入による無触媒脱硝過程においても、NOxから化学反応機構によってはN_2Oに転換している可能性がある。本研究ではこのような背景から、石炭燃焼の中から代表的な燃焼方法である微粉炭燃焼と気泡式流動層燃焼をとりあげ、本年度は主として前者に焦点を合わせた研究を行い、後者についても予備的な研究を行った。研究実績の概要は以下に箇条書きにして示す。 1.微粉炭燃焼実験を内径300mm,長そ2.3mの旋回式乱流炉で行い、燃料中の固定炭素分および揮発分の比である燃料比のみでなく、それぞれの中に於けるC,H,Nの成分比がおおきく異なる石炭として、太平洋炭、大同炭、ワ-クワ-ス炭の3種類を選択し、燃焼実験を行った。 2.燃焼過程における石炭の燃焼度と気相中に放出された炭化水素および窒素含有成分の種類が、NOxおよびN_2Oの生成・消滅に及ぼす影響について、実験的に検討した。その結果、炭化水素は種類よりもその濃度によって、反応場を酸性あるいは還元性にするため、NOxおよびN_2Oの生成・消滅に顕著な影響を及ぼすこと、また放出される窒素含有成分については、NOx特にNOについては、HCNとして放出される場合の方が、NH_3として放出されるよりもその生成量が多いが、N_2Oについてはあまり差が生じないことが解った。また、アンモニア注入無触媒脱硝法では、条件によってはNOがN_2Oに転換する可能性のあることを実験的に明らかにした。 3.以上の実験的研究の理解を深めるために、単一石炭粒子の燃焼に関する理論計算を23種類の化学種と84の化学反応式をとりいれて行い、実験結果を明確に説明できることを明らかにした。
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