研究概要 |
光を照射することにより,Bi系化物超電導体の臨界電流が低下し,超電導ー常電導転移が促進されることは既に平成3年度に確認した。また,転移促進効果は紫外領域の光で大きいことから,非熱的な機構の可能性が示唆された。 平成4年度に新たに得た結果をまとめると以下の様になる。 1.光照射下の電流ー電圧特性は,非照射時に比して,大きなバラツキ(標準偏差にして約10倍)を持つことが分かった。光照射下で試料の温度上昇は計算機シミュレーションから0.5K程度と評価できた。加圧により液体窒素温度を0.5K程度上昇させても光照射なしではバラツキは余り増加しない。このことから,光照射効果の発生機構として,光によるピン止め磁束の脱出促進などの電子的機構が有力と考えられる。 2.パルス光に対して,臨界電流の低下や発生電圧の増加が認められた。ただし時間遅れがみられ,幅0.6msのパルス光に対しては,電圧上昇波形は立ち上がり4ms,立ち下がり17msとなる。この結果はピン止め中心から脱出した磁束が磁気圧力により加速された後,再び捕獲されるモデルによっても説明できる。 3.YBCO薄膜においても光照射により,常電導転移が促進されることを確認した。YBCO薄膜試料のパルス光に対する応答は極めて速く,幅50μsのパルス光に対しては,10μs程度の遅れで追従することが明かとなった。この結果は光トリガ超電導スイッチング素子が実用的に極めて有望であることを示唆する。
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