研究概要 |
前年度までの研究において,光照射により超電導-常電導転移が促進されることが,Bi系バルク試料およびY系薄膜試料で確認された.また,その効果は紫外領域で強いこと,磁束フロー状態での発生電圧のばらつきが光照射下で顕著に増大することなどから,光照射効果のメカニズムとして熱的なものではなく電子的なものが有力と考えられた.平成5年度に得た結果をまとめると以下のようになる. 1.外部磁界を印加した状態で,V-I特性に及ぼす光照射の効果を測定した. 1.1暗中でのV-I特性は磁界強度の上昇とともに劣化する. 1.2光照射による電圧上昇は,暗中での発生電圧値が同じ場合を比較すると,500ガウスまででは磁界強度にはあまり依存しないことが分かった. 1.3発生電圧のばらつきは磁界強度が大きくなると減少する傾向にある.これから光照射により強いピン止め点がはずされ,なだれ的磁束フローが引き起こされるモデルを提案した. 2.一定電流通電時のパルス光に対する応答特性を検討した. 2.1一定強度の光照射下で電流値を増加させた場合、V-I特性の上昇分電圧は大きくなるが,遅れ時間,ピーク時間はほぼ変化しない.一方,一定電流の下で光強度を増加させた場合,上昇分電圧は大きくなり,遅れ時間,ピーク時間は短くなる傾向にある. 2.2同一試料であっても,光の照射部位によって発生電圧が異なることが分かった.試料の不均質性と内部の磁束分布の偏りによるものと考えられる. 2.3Y系薄膜試料の電圧応答波形は,バルク試料のそれより大きく,短時間で終了する.試料が薄いほど光の影響を受ける試料体積の割合が増し,拘束されている磁束が動きやすくなるためと考えられる.
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