極薄方向性珪素鋼帯の動的磁区の直接観察とコア損失

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03452148
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 荒井 賢一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (40006268)
• 研究分担者: 石山 和志 東北大学電気通信研究所, 助手 (20203036) ; 山口 正洋 東北大学電気通信研究所, 助教授 (10174632)
• キーワード: 極薄方向性珪素鋼帯 / 磁区観察 / SEM / トロイダルコア / メイズパターン / 損失 / 磁壁速度 / 180ﾟ磁壁

研究概要

極薄方向性珪素鋼帯は、近年申請者らにより開発されたもので、0.3mm厚の市販の珪素鋼板を出発材料とし、5〜150μm程度まで圧延し、三次再結晶焼鈍を施すことにより作製される。この極薄方向性珪素鋼帯のコア損失は、現用の最高級方向性珪素鋼板の約1/5、次世代のコア材料として開発が進められつつあるアモルファス磁性材料をも凌駕する。しかしながら本鋼帯のコア損失は、鋼帯厚が薄いということから期待される値よりはるかに大きく、磁区の動的挙動の異常がコア損失を上昇させていることが考えられる。
本研究では、極薄方向性珪素鋼帯を用い、トロイダルコアに成形したあと50Hz〜5kHzの交流磁界を印加し、その周波数および印加磁界強度を種々変化させた場合の磁区の動的挙動をSEM装置を用いて直接観察し、磁壁数とその移動速度のコア損失に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。
本研究により本年度得られた知見は多々あるが、その一例を述べる。
(1)SEMの走査周波数と三次再結晶法による極薄方向性珪素鋼帯のトロイダルコアの励磁周波数との間に微妙なずれを生じさせた磁区観測法により、その観測条件を吟味することによりトロイダルコアの動的磁区模様を10kHzの周波数まで観測可能となった。
(2)トロイダルコア作製の際にコア内表面に形成されたメイズパターンの磁区は、磁気特性がある程度回復する歪取り焼鈍温度、600℃付近で消え、180ﾟ磁壁が回復する。
(3)磁壁枚数は磁束密度の上昇とともに増加し、また周波数の上昇とともに増加することが確認された。

研究成果

• [文献書誌] Y.H.Kim, M.Yamaguchi K.I.Arai: "Lelation of eddy current losses with domain wall movement of very thin 3% Si-Fe strip-wound cores." IEEE Trans. Mag.28. 2781-2783 (1992)
• [文献書誌] 金 栄学,石山 和志 大川 将直,荒井 賢一: "極薄珪素鋼板の結晶粒径と磁区幅" 日本応用磁気学会学術講演概要集. 43- (1992)
• [文献書誌] 金 栄学,山口 正洋 荒井 賢一: "高周波領域における極薄方向性珪素鋼板の磁壁数とうず電流損失との関係" 電気学会マグネティックス研究会. MAG-92-1. 1-9 (1992)
• [文献書誌] 金 栄学,山口 正洋 大川 将直,荒井 賢一: "極薄珪素鋼による巻鉄心の層数と磁壁数及び渦電流損失" 日本応用磁気学会学術講演概要集. 44- (1992)
• [文献書誌] 金 栄学,山口 正洋 荒井 賢一: "極薄珪素鋼鉄心の磁壁数及びうず電流損失と板厚との関係" 電気学会全国大会講演論文集. 14-28- (1992)
• [文献書誌] 金 栄学,石山 和志 大川 将直,荒井 賢一 山口 正洋: "極薄珪素鋼による巻鉄心の層数と磁壁数及びうず電流損失" 日本応用磁気学会. 17. (1993)