本研究の目的は、従来のBCS超伝導体では不可能とされている室温超伝導への試みとして、理論的に予言された新し機構の超伝導現象、即ち非常に薄い絶縁膜によって空間的に分離された正孔一電子によるクーパー対によって生じる超伝導現象を確認することにあるが、本研究の特色は、絶縁膜として膜厚制御が容易なLB膜を用いることであった。素子の構造は昨年同様(n型半導体)150ÅLB膜/(P型半導体)を考えこの素子の作成を行なった。昨年度はP型の電極としてBi2Te_3などを用いたが、蒸着する際の組成ずれのため現在の蒸着装置ではn型しか得られなかったので、今年度は蒸着金属を用いない方法として、半導体LB膜のP型メロシアニンとn型ビオロゲンをそれぞれP型層およびn型層として素子の作成を行なってみた。しかしこれらは有機分子膜であるので面内の電気伝導度が低く、本研究のように面内の電気伝導を目的とした素子には向かないことが分かった。一方、LB膜とは離れてキャリア濃度や易動度が確実に分かっているn型およびP型のSiウエハーを用いて張り合わせによって(n型)/SiO_2/(P型)構造の素子を作る試みも行ったが、広い面積で50Å程度の一様な絶縁膜を作成しようとすると、張り合わせる際に導通してしまい、まだ目的の素子は得られていない。また、SiO_2層の代わりに薄い間隙を作る方法も試みているが、まだ間隙を目的の薄さにすることには成功していない。今後は、これらSi基板を用いた方法をさらに発展させると共に、LB膜を用いた方法として、P型Si基板上に50ÅLB膜を累積し、その上にn型のBi等を蒸着させる等、他の可能性について調ベることにしている。
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