卵殻の内部で成長する胚の心循環機能を、卵殻を介して行われるガス交換を阻害せず、卵殻を取り去らずに胚への侵襲を最小にして、心電図、インピ-ダンス・カ-ディオグラム、心弾動図、アコ-スト・カ-ディオグラム、心拍数、動脈血圧及び卵内圧を同時計測するシステムをデュアルチャンネルプログラマブルフィルタ-、ポリグラフ及びマイクロコンピュタ-を主体に構築した。電極と変換器を装着した実験卵は小卵器に入れ38℃の環境で測定を行う。本年度は実験モデル動物としての応用を確実のものとするために4チャンネルの同時計測システムとし、アナログ及びディジタル信号処理によりS/N比が大きく信頼性の高い測定が行えるシステムの開発を心掛けた。 1.動脈血圧に関してはカテ-テルの血管内埋め込み法に改善の余地を残したが、現法でも測定は有効で今年はカテ-テルから各種の自律神経薬(アセチルコリン、アトロピン、アドレナリン、ノルアドレナリン、イソプレナリン、フェントラミン、プロプラノロ-ル及びヘクサメソニウム)を0.5〜50ul注入し、動脈圧と心拍数に及ぼす効果を13〜16日令胚について明らかにした。この日令では副交感神経支配を受けているにもかかわらず、その機能はまだ作動していない。 2.心弾動図計測に用いたピエゾ素子は柔軟性のある薄膜なので、その特徴を利用してヒヨコの心尖拍動図を検出し、心拍数を無侵襲で計測するシステムを開発した。ふ化直後の心拍数は嘴打を行っている胚のそれよりも低く、2〜3日後に大きく増加し瞬時に大きな変動を起こす。 3.実験モデル動物として用いる将来の研究のため、拡散作用によりガス交換を行う胚、肺の換気運動により肺内ガス交換を行うヒヨコ及びその両方の作用によって呼吸している嘴打中の胚について環境酸素濃度の生体酸素摂取量に及ぼす効果を明らかにした。
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