本研究は、(1)筋骨格系の力学的構造と運動インピーダンス調節機能の関係、(2)運動目的と環境(対象物)インピーダンスに対応した身体インピーダンスの設定法、(3)運動インピーダンスをパラメータとする身体運動パターンの表現法を与え、環境との相互作用のもとでの身体運動の協調制御法を運動インピーダンスの観点から構成することを目的としている。 本年度は、多関節運動における人間の手先インピーダンスをスティフネスだけでなく粘性、慣性を含めた形で推定するために、以下の実験を実施した。 1)ロボット・アームの先端に6軸力センサを取り付ける。ロボット側にあらかじめインピーダンスを設定しておき、被験者にそのハンドを持たせ、直線、回転などの拘束運動制御を行わせる。運動中にロボット・アームを強制的に動かしたときに生じる手先反力から、ヒトが手先に設定しているインピーダンスを同定した。同時に、その間の筋電位(筋電計)、関節角度(PSDカメラ)を測定した。 2)その結果、(1)姿勢維持中の手先慣性行列が二関筋力学モデルによって計算した手先の等価慣性とほぼ一致すること、(2)スティフネス楕円体の方向性がMussa-Ivaldiらの実験結果とほぼ一致すること、(3)手先スティフネスの大きさはMussaーIvaldiらの実験結果よりかなり小さいこと、(4)手先粘性の方向性が手先スティフネスのそれと類似していることが明らかになった。
|