ランダム及びカオス現象のパワ-エレクトロニクスへの応用

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03452189
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 二宮 保 九州大学, 工学部, 教授 (10037939)
• 研究分担者: 東 徹 熊本大学, 教育学部, 助教授 (80165076) ; 香田 徹 九州大学, 工学部, 教授 (20038102) ; 原田 耕介 九州大学, 工学部, 教授 (90037705)
• キーワード: ランダムスイッチング / DCーDCコンバ-タ / 共振形インバ-タ / 雑音スペクトル分散化 / 高調波抑制 / 共振形DCーDCコンバ-タ / 同期引込 / カオス振動

研究概要

本研究では、半導体スイッチによる電力制御装置(パワ-エレクトロニクス機器においてスイッチング周期を不規則に変化させてスイッチング雑音の周波数スペクトラムを分散化することにより、各種装置の周波数特性を利用した雑音低減技術を開発することを目的としている。具体的には、DCーDCコンバ-タと共振形インバ-タのスイッチング周期をランダム信号を用いて変動させ、雑音スペクトル分散化による雑音低減効果を検討した。また、共振形DCーDCコンバ-タの特異な非線形現象である同期引込やカオス振動を調べた。その結果、以下のことを明らかにすることができた。
(1)平均スイッチング周波数の10倍以上の高調波成分に対しては、ランダムスイッチングによる十分なスペクトル分散効果が得られるが、一方、数倍程度の高調波成分に対してはあまり効果がない。
(2)スペクトル分散機構の定量的解析によると、スイッチング周期変動の標準偏差とある一定値以下に抑えられる高調波次数は逆比例する。即ち、スイッチング周波数の変動幅が大きいほど低次の高調波まで抑制できる。しかし、変動幅をあまり大きくし過ぎると、スイッチング周波数以下の可聴周波数成分が増大して騒音の原因となるので注意を要する。
(3)ランダムスイッチング制御された共振形インバ-タを蛍光灯点灯回路に用い、蛍光灯の放射雑音の抑制効果を実験で確認することができた。
(4)共振形コンバ-タ本来のスイッチング周波数と入力雑音周波数の差が相対値で1/100程度になると、同期引込が生じ、更に両方の周波数差が小さなくなると、コンバ-タが不安定となり、カオス振動が生じる。

研究成果

• [文献書誌] 二宮 保,竹内 章: "Analysis of Beat Phenomenon and Chaotic Oscillation in Resonant Switching Converters" Proc.International Conf.on Industrial Electronics,Control & Instrumentation(IECON '91). 417-422 (1991)
• [文献書誌] 田中 哲郎,二宮 保 外: "Noise Analysis of DCーto DC Converter with RandomーSwitching Control" Proc.IEEE International Telecommunications Energy Conference(INTELEC '91). 283-290 (1991)
• [文献書誌] 二宮 保,松本 規雄 外: "Static and Dynamic Characteristics of ZeroーVoltageーSwitched HalfーBridge Converter with PWM Control" IEICE Transactions(電子情報通信学会英文論文誌). E74. 4,085-4,095 (1991)
• [文献書誌] 二宮 保,竹内 章: "共振形スイッチングコンバ-タにおけるカオス" 電子情報通信学会技術研究報告(非線形問題研究会). 91ー371. 1-5 (1991)
• [文献書誌] 二宮 保,川勝 裕和 外: "ランダムスイッチング共振形インバ-タ" 電子情報通信学会技術研究報告(電源技術研究会). 91ー482. 17-24 (1992)
• [文献書誌] 香田 徹: "Note on FiniteーWordーLength Realization of Bernoulli Shift by M Sequence" IEICE Transactions(電子情報通信学会英文論文誌). E74. 3,024-3,028 (1991)