研究概要 |
前年度の基礎的な数値解析に基づき,実際の4本のケーブルで球体の浮体が係留されている場合の抵抗について検討した。ケーブルは最も一般的なプロポーションと強度を有し,その公称強度に相当するだけの浮力を4本のケーブルに与えるべく,適切に設定された大きさの鋼製球状の浮体を係留した。ケーブルとの相対的な関係から浮体は剛と仮定し,ケーブルは3次元の自由度を有する伸長可能な弦として取り扱った。浮力も局所的なつり合いによる厳密な取り扱いをし,形状決定に影響を及ぼす形で定式化に組み込んだ。ただし,ここでシミュレーションしているように強度比から考察して十分な大きさの伸長力を与えられたケーブルにおいては,浮力の影響は比較的少ないものと考えられる。また,鋼製ケーブルを例として用いたため,伸長も無視しうる程度であった。 ここで対象としているような浮体基礎の場合,最も支配的な外力である直接の鉛直荷重に対する抵抗は,2本のケーブルの場合と同様,終局耐力の90%近くまで線形を示した。また,潮流力をモデル化した水平力に対しても,係留の足とその潮流の向きとの関係は多少影響するものの,現実に容認されるであろう浮体の変位・回転量の範囲内であれば,線形の抵抗則で近似できることが明らかとなった。また,浮体基礎を転倒させるようなモーメント外力を近似的に扱い,浮体を強制回転させるために必要な外力と回転量とで,回転抵抗を検討したが,これについても現実的な変位量の範囲内では,線形抵抗で十分近似できることが明らかとなった。ねじれ抵抗に至っては,ほぼ完全に線形と考えてよい。今後はより実際に近い外力条件に対する抵抗則と安定規準について検討する必要がある。
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