研究概要 |
本研究では、高山地域での雪面熱収支モデルの開発と衛星マイクロ波リモートセンシングによる広域水文情報抽出の基礎研究として、雪面熱収支と積雪のマイクロ波誘電特性に関する比較研究を行った。 1)雪面熱収支の比較研究:5〜6月に富士山北斜面(吉田側)の3400m・2900mの2地点に、気温計・湿度計・風速計・日射量計・放射収支計・アルベド計・積雪深計(カメラ方式)を登載した観測プラットフォームを設置するとともに週に1度の融雪深・雪密度の観測を実施して、斜面融雪量を計測した。また比較検討のために新潟県長岡市郊外の標高300m地点において同様の観測を行った。解析の結果、高山地帯では全融雪熱量に占める乱流交換量(顕熱・潜熱)の割合が低地に比較して多く、特に潜熱交換によって低地の3〜4倍の急激な融雪が生じることが示された。一方、放射収支は標高により影響される傾向が小さいが、3400mの高所になると局所的な気象の影響により放射収支量が低下する。 2)積雪のマイクロ波誘電特性の比較研究:積雪のマイクロ波伝搬特性を表す放射・吸収・散乱全てに関与する誘電率を、携帯型誘電率計装置(Lbad,Cband)を用いて計測し、積雪の含水率および密度と水滴の付着形状との関係を調べた。さらに、既往のモデルの適合性の評価から、積雪を球形の氷粒子にレンズ状の水滴が付着した混合物と仮定し、さらにその付着形状の変化を体積含水率で表現する山本ら(1984)の式の妥当性を現地データを基に検証した。また、長岡と札幌での積雪断面観測データより、積雪のマイクロ波誘電率プロファイルの時系列変化特性を比較し、湿雪地域である長岡の誘電率プロファイルの多様性を提示した。
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