研究概要 |
これまでの研究の一番の成果としては,先ず,ス-パ-台風T9119,T9121及びT9123号に伴う波浪を合計6台の波高・流速計を用いて平面的に,しかも台風の成長期から減衰期までの連続長時間観測に成功した点があげられる。この観測では,気象衛星ひまわり画像を直接受信すると共に気象観測も同時に行われており、今回得られたデ-タは気象と海象とがリアルタイムでリンクした貴重なものと言える。この波浪デ-タには世界最大級の波高(3m)を有する長周期波が捉えられた。現地デ-タからは,リ-フ上のサ-フビ-ト現象が海岸の固有周期と来襲波群の周期とが一致することによって生じる平均海面の共振応答,すなわち一種の共振現象として存在していることが実証されると共に,その周波数応答特性などが明らかにされた。さらに,沿岸方向の長期周波の存在を認め,それが岸沖方向の長周期波の波高の空間的な変動によって引き起こされていることを明らかにした。現地観測では,波浪デ-タと共に防波堤に作用する波力の観測も行われたが,このデ-タに関しては現在検討中である。 理論的には,波のRadiation Stressの時間・空間分布特性を数値計算によって検討し,海面を平面的に捉えた場合の高波の連なり(海沖ー沿岸方向の連なり)に関する統計量を得た。また,この高波の空間的な変動が一様勾配海岸にエッジ波を引き起こすメカニズムともなり得ることを示した。 研究分担者である筒井らは,有限要素法を用いたサンゴ礁内の波浪推算手法の開発を行い,その有用性を室内実験及び現地観測デ-タと比較することによって示した。さらに,明治以来の台風・波浪災害を整理しデ-タベ-ス化することにより,沖縄県地方の防災力の変遷についての研究を進めた。
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