研究概要 |
本年度は,まず昨年度に引き続き波浪の現地観測が実施された。観測対象とした台風は,T9203,T9210,T9215,T9216,T9222,T9228,T9230の計7個である。観測では,6台の二成分電磁流速計内蔵型の波高計が用いられた。これらの観測によって,沖波の波群特性と砕波帯内外の長周期波に関する貴重なデータを大量に得ることができた。これらのデータは,項目別に整理されデータベース化された。研究では,これらのデータと昨年度得られたデータとを統合して,長周期波の発生メカニズムとその実態を明らかにした。具体的には,海岸に形成される長周期波の発生が来襲波群の波群特性に明確に関連していること,固有周期(トラップモード)を有する海岸では,長周期波として選択的にその固有周期に近い振動モードが卓越すること(すなわち,共振応答の発生)などが明かとなった。台風の発達期から減衰期までのデータを整理した結果,砕波帯内外の長周期波は共に,入射波高とほぼ比例関係にあり,汀線近傍の長周期波の波高は,入射波波高の2〜3割として存在していることが分かった。波浪痕跡値や災害調査などからは,長周期波と遡上波との関係を明らかにした。 数値計算は,個々波の波高算定手法の開発と長周期波のシミュレーション手法の開発の両面から行った。個々波の砕波変形計算は筒井が主として行い,有限要素法を用いて水深不連続点をも解析しえる手法の開発を行った。長周期波のシミュレーションには,差分法が用いられた。これらの計算結果は,現地観測値と比較され良好な一致度を得た。
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