研究概要 |
貫上は平成3年3月から同年12月までの期間に採取した大阪港の実海水を対象として,円筒型水槽における暗条件下でのバッチ実験および連続負荷実験を実施した。その結果,バッチ実験から礫間生間物膜の有機物(COD)除去速度定数ならびに溶存酸素消費速度定数を求め,それらの値が下水や河川水を対象とした場合に比べかなり小さいことを見出した.また,同時に実施したゲルクロマトグラム分析によって,実海水中に含まれる有機物が生物分解性の低い物質で構成されていることを明らかにした. さらに,実海域での負荷条件に相当する長期間の連続負荷実験から溶解性の有機性炭素については,微生物による分解はほとんど期待できないが,溶解性の窒素および燐は20〜53%程度の除去率を示し,ある程度の微生物分解が期待できることを見出した. 一方,浮遊性物質については,礫間での濾過作用による捕捉効果が高く,その中に含まれる有機性炭素,窒素および燐は30〜70%程度も除去されることを示した. 小田・重松は,実海水をいれた波浪水槽に台形断面の礫間生物膜構造物の模型を設置し,その内部および周囲での海水中のTOCとDOの経時変化を,波を与えないときと与えたときに測定し,定性的にではあるが,礫間生物膜構造物沖側方面での砕波による曝気作用が生物膜の海水浄化効果を高めることを示した. さらに,小田・重松は,貫上の水槽実験の結果および小田・重松の波浪水槽における曝気効果に基づいて,潮流場における礫間生物膜構造物による有機物の浄化・拡散過程および溶存酸素消費過程を有限要素法を用いた数値シミュレ-ションで解析し,礫間生物膜構造物によるその周辺海域の海水浄化効果を検討した.その結果,生物膜のみでは海水中の有機物(COD)は10%程度しか除去できないことを示し,微生物以外の他の生物の浄化機能の利用を取り入れる必要性を指摘した.
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