研究概要 |
小田・貫上は,昨年度に引続いて礫間生物膜の海水浄化特性を解明するために,礫粒径と流速を変えた室内バッチ実験を系統的に行い,シーブルーテクノロジー研究会によって得られた実験結果および昨年度の筆者らの実験結果をも含めて実験結果を総合的に評価した.その結果,CODおよびSSの除去速度定数(反応速度定数)および酸素消費速度定数が通常の塩分濃度と水温の変化の範囲内では,主として比表面積と礫層内の断面平均流速に依存することを確認し,それらの定量的な関係を実験式によって表した. 小田・重松は,実験式で表されたこれらの除去速度定数と酸素消費速度定数を物質拡散方程式に導入し,石積堤の配置形状,規模,石材寸法を変えて石積堤によって囲まれた湾岸汚濁水域の潮汐による浄化過程をFEMによって計算し,石積堤およびそれによって囲まれた内水域内の定常状態におけるCODおよびSSの濃度分布および溶存酸素の濃度分布を求めた.その結果,内水域の定常状態におけるCODおよびSSの相対平均濃度(外水域のバックグラウンド濃度に対する内水域平均濃度の比)は,石積堤の配置形状が一定のときは,内水域の面積にあまり関係なく,石積堤の流れ方向の長さに主として支配されることを明らかにし,それらの定量的な関係を求めた.さらに同時に求めた堤体内および内水域内の溶存酸素低下率と内水域内の相対平均濃度とを総合的に考慮し,実用的な最適石積堤長さを検討した. また,小田は,小型波浪水槽を用いて,礫積堤の沖側および岸側における波浪による再曝気の経時変化を測定し,礫積堤の再曝気係数を求めた.さらに,過去3年間の研究成果を総括し,沿岸局所水域の水質改善を画るための実現可能な礫間接触浄化堤の配置形状と規模および波浪曝気による浄化機能の向上策を提案した.
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