本研究では、大規模で平面的に細長い形状をした建築物と周辺地盤の地震時挙動の相互関係を調査するために、埼玉県比企郡鳩山町にある東京電機大学理工学部2号棟(全長116m、幅16m、高さ16mで、以下2号棟と略す。)及び周辺地盤地下15mの位置に地震計を設置することを計画した。平成3年度に行った研究の概要は以下の通りである。 1.建物周辺の地盤調査 校地造成時のボ-リング調査資料及び今回行ったボ-リング調査により、2号棟周辺の地盤は、物見山砂礫層と呼ばれる洪積期の堆積層で、N値50前後の粘土混り砂礫層が地震計の埋設位置である地下15m以深まで続いていることが判った。調査で求めた土質的諸指標から、太田・後藤の方法で地盤のS波速度の推定を試み、その値として300m/sを得た。 2.地震計の埋設及び2号棟の方位の測定 地震計埋設のためのボ-リング工事を行い、3成分型地中震計を地下15mの位置に埋設した。2号棟の長辺方向(南北方向)に沿って南側から順にNo.1、No.2及びNo.3計3台の地震計を配置した。それぞれの水平距離は、約68mと42mである。各観測点の水平成分の検出器は、磁北を基準に設置している。また、2号棟の南北ラ-メン軸と磁北とのなす角度は5.5度である。 3.地中地震計による地震観測 地中地震観測を開始し、1992年2月26日茨城県南西部地震(マグニチュ-ド3.9)における2号棟周辺地下15mの位置における加速度記録を採取した。各記録の最大加速度は、南北、東西、上下成分の順に、No.1が1.22gal、1.68gal、0.58galで、No.2が1.56gal、1.22gal、0.76galで、No.3が1.77gal、1.22gal、0.89galである。南北及び東西成分の主要動付近の波形には、短周期成分の位相を除けば伝搬性が認められ、No.1〜No.3の間約110mで0.03秒程度の時間差が存在していることが判った。
|