昨年度までは、電磁弁・油圧シリンダ系の実験装置を用いて、シリンダに振動の機能を持たせた多機能シリンダの基本特性を調べ、制御する諸因子について検討、考察した。 本年度は、油圧ショベルに多機能シリンダを搭載して、実際に土を掘削する場合の有効性を作業現場で実験的に検証することを試み、油圧ショベルで効率の良い掘削作業を行わせるためにはどのような条件が最適であるかを検討、考察し、土の振動掘削の基礎的資料を得ることを目的とした。得られた主な成果は次のとおりである。 振動機能を与えない非加振では土の掘削が不可能であった場合でも、多機能シリンダを加振させることによって能率の良い掘削が可能になることが検証できた。次に、加振と非加振とで土を掘削した時の送りシリンダ内の圧力変化を測定した結果、両者は大きく異なり、特に加振時の圧力は非常に小さかった。したがって、多機能シリンダに振動の機能を与えることによって、掘削に要する時間ならびに消費エネルギが大幅に減少できることが明らかになった。また、土の振動掘削には、振動振幅と周波数の最適な組み合わせが存在することが確認できた。すなわち、周波数の大きさにより掘削効率を最大にする振動振幅が存在し、またその周波数が高くなると共に最良の掘削効率を示す振動振幅は小さくなり、さらに、コンピュータによって最適条件で掘削を制御することが可能であることが明らかとなった。このように、研究室規模のモデルを用いて、これまで得られた多機能シリンダの基本特性が、実際の油圧ショベルで検証でき、その有効性が明らかになった。また、実際の油圧ショベルでの検証実験において、振動は作業者や機械に悪影響をおよぼすと考えられるので、入力信号の波形を考慮し、かつ必要なときにのみ振動を加えるか、あるいはロボット化して機械に人間を搭乗させないようにすべきであることなどが確認できた。
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