まず、コンプライアンスが順次増大して行くと仮定した構成方程式について検討した。その際、岩石の多数のき裂が生じ、負荷能力が次第に低下していく場合にも適用できることを、一つの主眼とした。実際の岩石に置いては、コンプライアンスの増大と永久歪みの増大との両者が観察される。従って、歪みが途中で減少するような場合を扱うには、コンプライアンスの増大と永久歪みを分離して扱える構成方程式が必要となる。しかしながら、岩盤内構造物の解析においては、歪みが小さくなることはまれであり、このような場合には、今回検討した構成方程式で十分と思われる。今回開発した構成方程式は非常に簡単なものであり、将来付け加えなければならない点はいくつかあると思うが、今後、き裂を含んだ岩盤の変形・破壊挙動に関し統合的な検討を進める上での指針を得ようとする試みの第一歩であると考えている。 引き続き、気乾状態と湿潤状態とでの時間依存性の差異を検討するために、載荷速度を変えた一軸圧縮試験を行なった。この際にも、き裂を多く含むようになり、負荷能力が際めて小さくなるまでの範囲を研究対象とした点で、従来の研究をしのいでいる。強度、ヤング率ともに気乾状態の方が大きく、気乾状態の時の応力一歪線図が、湿潤状態の時のそれを内包することがわかった。他方、載荷速度が増加すると、強度は増加するがヤング率はほとんど増加しない。載荷速度が10倍になった時の強度の増加が、気乾状態と湿潤状態とで変わらないことは、興味深い。また、この場合も載荷速度の速い時の応力一歪線図が小さいときのそれを内包することがわかった。さらに、構成方程式に若干の改良を加えれば、気乾状態のみならず湿潤状態での実験結果をも、精度良く再現できることがわかった。
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