研究概要 |
本年度は超音波顕微鏡(SAM)による表面皮膜の剥離の様子の観察と走査電子顕微鏡(SEM)による試料破面を横方向からの観察、および超微小硬さ計による物体表面の機械的性質の評価に関する実験を行った。 1) SAMによる表面皮膜観察 超音波顕微鏡法は試料を破壊せずに、その内部とくに表面近傍の様子を観察することができるきわめて有効な手段である。本研究では、PVDおよびCVDによりTiC膜をコーティングした超硬合金にVickers圧痕を付け、これによる膜の剥離の様子から、コーティング方法の違いによる密着性の違いが明確に示された(Mater.trans.JIM,33(1992))。 2) SEMによる破面観察から表面皮膜ならびに表面層の解析 表面に存在する種々の表面層(コーティング膜を含む)あるいは欠陥は、材料の破断に大きく反映させる。破面観察は表面の評価に有効である。 (1)表面にTiCをコーティングした超硬合金の、膜の密着性、境界面を破断面から評価できることを明らかした(Mater.Trans.JIM,33(1992))。 (2)超精密加工されたFerrite単結晶の表面加工層の存在による破面の違いを明らかにした(Mater.Trans.JIM,34(1993))。 3) 超微小硬さ計(Nano-indenter)による表面層の評価 超微小硬さ計により表面のμm以下の範囲の性質の違いを検出できる。 (1)上記のFerrite単結晶の表面層に適用し、硬さの異なる深さ領域、および弾性率の異なる深さ領域を明らかにした。 (2)さらに、機械的性質の大きく異なる種々の材料からなる表面層を持った試料に適用し、この硬さ計により得られる荷重-変位曲線との対応を検討した。 以上の機械的性質試験および組織学的実験により、表面・境界面およびその近傍領域が傾斜機能性材料(物性応用する機能性材料一般)の形成において、どの様な役割を演じるのか等に関する情報が多数得られた。
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