研究概要 |
本年度はNiーAl合金についての研究とAuーcd合金についての研究を平行して進め、以下の結果を得た。まずNiーAl合金については、複数の合含単結晶を作製して組成と変態温度の関係を明らかにし、次に応力語起変態で生成したマルテンサイトをX線マイクロビ-ム・ラウエ法で構造を同定した。この結果、Al濃度が36.5at%以下では3R構造,37.0at%以上では7R構造のマルテンサイトによることが明らかになった。次にNi-37.0at%Al合金を用いて,このユニ-クな7R構造を持つマルテンサイトに対し,B2→7R変態の結晶学を理論的実験的に行った。即ち7Rマルテンサイトの晶癖面と母相に対する結晶方位関係をX線マイクロビ-ム・ラウエ法を用いて測定し,最小二乗法で精密に評価した後,「マルテンサイト変態の現象論」を用いた計算と厳密な比較を行い,理論と実験の間に極めてよい一致を見た。即ちこのユニ-クな変態に対しても「理象論」が著くなり立つことを明らかにした。この成果は,昨年ボストンで開かれたMRS会議で発表した。 Auー49.5at%Calではβ_2→ζ^´_2変態が以前より知られているが,ζ^´_2マルテンサイトの結晶構造は1940年代の発見以来不明のままであったが,今回の我々の研究でついに構造を決定することができた。マルテンサイトの構造解析の難しい点は,高温側の母相で単結晶を作っても,冷却による変態の際に複数の兄弟晶になるため単結晶のマルテンサイトが得にくいことにある。我々は応力誘起変態の手法でζ^´_2マルテンサイトの単結晶を得ることに成功し,このマルテンサイトに対し千〓日抄計による日抄実験と最小二乗法で精密に構解析を行い,構造決定を行った。空間群はP3で,合金であるにもかかわらず中心対象を持たない点が興味深い。またβ_2からζ^´_2への構造変化は〈110〉〈lio〉タイプの三組の横波変位波で記述できるという大変興味深い結果もえた。
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