3次元準結晶はMackay型準結晶と菱形30面体準結晶に大別される。前者は、本研究グループが提案したQCIC(Quasiperiodic Configuration of Icosahedral Clusters)モデルにおいて示されたように、12個のMnと32個のAlから構成されるクラスター、後者は菱形30面体のクラスター、といずれも正20面体対称の原子集団を準周期的に配置したものであることが定設となりつつある。最近、回折スポットがfccの消滅を示す準結晶(F型準結晶)が発見された。この準結晶は構造の完全性が極めて高いことが報告されているが、具体的な構造は明らかでない、本研究は、X線回折のデータを基にF型であるAl-Cu-Ru系およびAl-Pd-Mn系の構造解析を行い通常のMackay型3次元準結晶の構造との関連性に注目しつつ、その構造モデルの構築を行うことを最終的な目的としてきた。 X線回折測定は高エネルギー物理研究所の放射光施設で行った、Al-Cu-Ru系とAl-Pd-Mn系の粉体準結晶試料に対して、それぞれRuとPdのX線異常散乱利用した実験をおこない、Ru原子、Pd原子の環境構造を求めた。これらのX線の回折プロロファイルは、指数がすベて奇数であるいわゆる超格子ピークを有し、通常のMackay型とは異なっている。しかし、二体分布関数を検討した結果、これらのF型の準結晶も局所的にはMIクラスターと類似の構造をとっていることが判明した。Al-Pd-Mu系については、単結晶を作製し、Pdに関する異常散乱法を併用した単結晶X線回折測定を行った。そして、この結果からパターソン関数を導出してその構造に関する詳細な検討を行った。その主たる結果は、次の2点である。1)QUICモデルにおいて、二種類の原子クラスターを偶奇性に基づいて二種類に分別した準格子点に配置したモデルを考案しこれが適切であることを示した。2)これらのF型準結晶の6次元逆格子は体心立方である。 これらの本年度の成果は、報告論文2編として公表し、1992年春および秋の日本物理学会および同年春および秋の日本金属学会においては講演発表を行った。また、論文3編を投稿準備中である。
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