研究概要 |
銀シースビスマス系酸化物高温超伝導線材の断面形状と超伝導特性に及ぼす圧延方法の影響を調べた.外径12mm,内径8mmの銀管にBi系超伝導粉末を充填し,外径5.2mmまで伸線後,平圧延により厚さ2mmの平線を製造した.これを,通常の平圧延およびサテライトミル圧延の2方法で20パス(1パス圧下率3.5%)または30パス(1パス圧下率2.5%)圧延を行い板厚1mmとした.さらに通常圧延を30パス(1パス圧下率5%)を行い,厚さ0.2mmのテープ状線材を得た.この線材に1128K,180ksの大気中焼成処理を行い2223相を成長させた.その後結晶配向度を高めるための2次加工を行った後1113K,180ksの大気中焼成を行った.2次加工としては,通常圧延およびテープ状線材を長さ80mmに切断し幅方向に圧延するクロス圧延の2法を適用し,パス回数はいずれも1パスあたり2.35%で,0,3,6,9回の4種とした.仕上がり板厚はそれぞれ,0.20,0.18,0.17,0.16mmであった. これらの最終製品について,断面形状の観察,超伝導特性の測定を行った.得られた結果は次のようである, 1)線材の成形過程でサテライトミル圧延を適用すると,通常圧延に比べて幅広がりが大きく,酸化物とシースの界面の平坦度がやや悪くなった.また,通常圧延,サテライトミル圧延とも,本実験の範囲ではパス回数は線材の断面形状に影響を及ぼさなかった. 2)臨界電流密度(Jc)に最も大きく影響したのは焼成時の2次加工法であり,クロス圧延を行った方が通常圧延よりも高いJcを示した.また,成形途中でサテライトミル圧延を適用したものは,通常圧延で成形したものと比べて,やや低いJcを示した. 3)2次加工にクロス圧延を適用した場合の集合組織は,c軸がND軸に平行な成分を中心として幅方向に分散した成分を持ち,通常圧延を適用したものには長手方向に分散した成分が現れた.
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