タービン、ボイラーなどの化石燃料を使用するエネルギー関連機器では、酸素、硫黄、灰分、塩類などが金属材料と反応して、高温腐食が発生する。特に、これら付着物と腐食生成物が融体を形成するとき、ホットコロジョンと言われる苛酷な腐食となる。このホットコロージョンの腐食機構については、溶融塩化学と腐食の電気化学的手法を用いて、解明が進められているが、それに至る経緯については、不明な点が多い。 本研究では、付着物と腐食生成物などの固体で覆われた金属材料表面で、低融点の溶融塩となって溶解し金属と反応する様子を直接・その場観察できる装置を開発し、いくつかの系でその有用性を実証した。 得られた結果は、以下のように要約される。 (1)走査電子顕微鏡の電子銃室と試料室とを分離するため差圧排気機構を設置し、低真空ガス雰囲気での観察が可能となった。 (2)試料室に加熱装置を組み込み、最高500℃までの加熱が可能となった。 (3)装置の性能をチェックするため、ウッドメタル(融点:90℃)、ZnC1_2-KC1混合塩(融点:200℃)、錫金属(融点:231℃)の加熱・冷却過程をその場観察した。その結果、ウッドメタルと混合塩では良い結果が得られたが、錫では溶解温度に差が見られた。 (4)融解過程は、しかしながら、短時間で完了するため、その詳細を観察することはできなかった。今後は、ビデオ撮影等して、融解過程を追跡する必要がある。 (5)その場観察の研究と並行して、低硫黄分圧下における硫化腐食実験を行った。その結果、特に、粉界選択型の腐食挙動について、多くの成果を得ることができた。
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