研究概要 |
NiをMnで置換したCr-Mn系オーステナイト系耐熱鋼が核融合炉第一壁構造材料の一候補材と考えられている。そこで本研究では、新低放射化CrーMn系耐熱鋼を開発するために、低放射化元素であるW,V,Ti,Ta等がこの系の合金の高温強度及び高温長時間加熱の際の微細組織変化へどのように影響するかを明らかにする目的で研究を行なった。本報告者らは、マトリックス成分としてFe-12Cr-15Mnが適当であることを既に示している。また、平成3年度の実績報告書において、W添加はM_<23>C_6型炭化物析出を促進し、高温強度を少し高めること、またV添加は微細なVNを析出させ高温強度を著しく高めることを報告している。平成4年度には上記材料のより長時間時効における微細組織を明らかにするとともに、Ti,Taを添加した材料についても高温強度及び時効における微細組織変化を明らかにした。すなわち、(1)V添加の有無によらず、3000から8000時間の長時間600℃時効においては粗大な、M_<23>C_6型炭化物が結晶粒内にも析出し、3000時間以降の著しい時効硬化を引き起こしている。(2)Ti添加により微細なVNの析出がやや抑制され時効硬化も少し抑えられたが、高温強度は充分に大きく靭性も改善された。(3)Ta添加によりTaNのやや粗大な析出の為、VNの析出は抑えられたが、高温強度はVあるいはTi添加材とほぼ同等で、靭性が著しく改善されたことから、N-V-Ti-Taの添加組合せ及び成分の最適化により優れた低放射化材料開発の見通しが得られた。
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