研究概要 |
平成4年度の研究は,アーク放電を溶接に応用した場合のアーク・溶融池系界面における金属蒸発現象を静的な直流アーク溶接と動的な交流アーク溶接に分けて検討している. 直流アーク放電を使って陽極金属を溶融・蒸発させて,その蒸発形態を分光法によって観察した結果,ヘリウムの場合はアルゴンの場合に比べて金属蒸気がアークの上方まで上昇していることを明らかにしている.また,蒸発金属原子の空間分布に関しては,ヘリウムやアルゴン+水素の場合には,溶融池全面で金属蒸気が発生し,その蒸気は雰囲気圧力による影響をほとんど受けないが,逆に,アルゴンの場合には,アーク中心軸に金属蒸気が集中し,雰囲気圧力の増加によってその蒸気が急激に溶融池近傍に抑えられることを明らかにしている.これより,アルゴンの場合はヘリウムやアルゴン+水素の場合に比べてアーク圧力が大きいことを明らかにするとともに,雰囲気ガスの種類によってアーク圧力が異なることを示唆している.アーク放電を交流アーク溶接に応用した場合,陰極点は,まず溶融池上に発生し,その後時間の経過とともに(放射状に)クリーニング域に拡がることを明らかにしている.また,陰極点は,合金種類によって数,径,速度において異なり,これは合金添加物に影響されることを示唆している.分光法によってクリーニング域からの蒸発物質の測定を行った結果,Alに比べてMgの方が蒸発しやすいことを明らかにしている.材料の仕事関数と蒸気圧は,アーク溶接における材料蒸発現象の支配要因の一つであることを示唆している.
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