1.研究目的:剪断現象は地すべり、斜面崩壊、剪断試験等の自然現象的にも実験的にも多く見られる。剪断現象の力学的性質については多くの研究があるが、物理的性質についての研究はほとんど無い。本研究は種々の段階の剪断層につき種々の試験を行ない、剪断層の構造、透水性や力学性、およびそれらの諸関係を解明する。 2.剪断層の構造:主として一面剪断試験機を用いて、種々の段階に発達した剪断層を作り、その立体的空隙構造を軟X線造影法により研究し、剪断層の表面構造を走査型電子顕微鏡等により研究し、次の諸現象を初めて解明した。剪断の進行と共に剪断層も発達する。十分に発達した剪断層においては、小規模の剪断面が将棋倒し状に連鎖し、この連鎖はさらに強制剪断面付近において樹枝状に密集している。 3.剪断層の水理的性質:試料の含水比を変え2.と同様の試験を行ない、また剪断層の透水係数試験法を開発して次の諸現象を初めて解明した。剪断層の構造は含水状態により変化する。また剪断層の透水性は剪断層を持たない部分より大きいが、剪断の進行と共に変化する。 4.剪断層の強度:クリープ段階の剪断層への水分添加法を開発し、剪断強度は水分を含むと急激に低下することを初めて明らかにした。 5.中、長距離剪断:中距離剪断が可能な試験機を試作し、種々の剪断変位を経た剪断層を作る方法を確立し得、それらにつき上記の諸試験に着手した。自然の地すべり層につき上記の諸研究に着手し研究手法を確立しつつある。 6.剪断層間隙の量、比表面積:剪断の進行に伴う、剪断層間隙の量と比表面積の変化をN_2ガス、H_2Oガス吸着法により研究した。その結果両法の精度と測定値の相違を解明し、両法を剪断層に適用する際の問題を解明したが、剪断層に関し高精度の定量には至らなかった。
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