抗原ペプチドおよびT細胞レセプターとの結合に及ぼすHLA多型の影響に関する研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03452276
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 西村 泰治 熊本大学, 医学部, 教授 (10156119)
• 研究分担者: 松下 祥 熊本大学, 医学部, 助教授 (50167649)
• キーワード: HLA / 抗原ペプチド / T細胞レセプター / T細胞エピトープ / HLA結合モチーフ / 免疫遺伝学 / 多型

研究概要

日本人集団において慢性関節リウマチ,インスリン依存型糖尿病などの自己免疫疾患の患者群で著明に増加しているHLA-DR4関連抗原を中心に、HLA-DR分子に結合しT細胞を活性化する非自己および自己由来の抗原ペプチドを同定し、これとHLA分子との結合において重要なペプチドおよびHLA分子上のアミノ酸残基を決定することを目的として研究を行った。DRB1*0406分子に結合した自己抗原ペプチドを認識するT細胞クローン3種類および溶連菌M蛋白に由来する21アミノ酸残基からなるペプチドを認識するT細胞クローンを一種類樹立した。前者は、DRB1*0402および0404分子をも認識することより、37Ser→Tyr,67Leu→Ileu,70Gln→Asp,71Arg→Glu,および74Glu→Alaへの置換は、自己抗原ペプチドの結合ならびにT細胞レセプターによる認識には関わっていないと推定された。いっぽう、DRB1*0401,0405および0410には全く反応しなかったことより、57Asp→Ser,71Arg→Lysおよび86Val→Glyの置換は抗原ペプチドの結合あるいはT細胞レセプターによる認識を不可能とすることが明かとなった。現在、DRB1*0406分子に結合する自己抗原ペプチドの精製ならびにアミノ酸配列の決定および溶連菌M蛋白に由来するペプチド上のT細胞エピトープの同定を実施しており、これらの情報をもとにDRB1*0406分子に結合するペプチドのモチーフを決定する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Inamitsu,T.: "Different recognition of transgenic HLA-DQw6 molecules by mouse CD4^+ and CD8^+ T cells." Immunogenetics. 35. 46-50 (1992)
• [文献書誌] Hatae,K.: "Genetic control of non-immune responsiveness to hepatitis B virus vaccine by an extended HLA haplotype." Eur.J.Immunol.22. 1899-1906 (1992)
• [文献書誌] Honda,K.: "Production of monoclonal antibodies specific to major allergens of Cryptomeria Japonica pollen." Hybridoma. 11. 361-366 (1992)
• [文献書誌] Fukui,Y.: "T-cell repertoire in a strain of transgenic C57BL/6mice with the HLA-DRA gene on the X chromosome." Immunogenetics. 37. 201-211 (1992)
• [文献書誌] 西村 泰治: "HLAの分子生物学と自己免疫疾患" 実験医学. 10巻2号. 33-39 (1992)
• [文献書誌] 西村 泰治: "HLAと自己免疫疾患" ホルモンと臨床. (1993)
• [文献書誌] Nishimura,Y.: "“Molecular approaches to the study and treatment of human disease"" Elsevier Science Publishers, 11 (1992)
• [文献書誌] 西村 泰治: "HLAはなぜ疾患感受性と連鎖しうるか,免疫のしくみと疾患" 羊土社, 18 (1992)
• [文献書誌] Fukui,Y.: "“HLA 1991,Vol,11"" Oxford University Press, (IN PRESS)
• [文献書誌] Kamikawaji,N.: "“HLA 1991,Vol.11"" Oxford University Press, (IN PRESS)
• [文献書誌] Yoshizumi,H.: "“HLA 1991,Vol.11"" Oxford University Press, (IN PRESS)