研究概要 |
本年度の研究結果は2つの事項に要約できる。 (1)ビスマス系バルク高温超伝導体レンズ(スーパートロン)をヘリウム冷凍機によって〜65kまで冷却して、レンズの電子ビーム(〜340keV,〜1kA,〜10ns)の集束性能を調べた。その結果、レンズ材料の臨界温度(〜103k)よりも低温では、動作温度が低い程、高い性能を示した。この実験結果は、スーパートロンの動作モデル(フェライトコア・モデル)を裏付ける。すなわち、レンズ効果はフェライトコアと同じように、バルク内に誘起される遮蔽電流が、速くしかも高い電流に立ち上がることによる。今後、レンズ材料として、イットリウム系を使用して、その臨界温度(〜90k)以下において、ビスマス系と類似の結果を得れば、上述のモデルの検証がなされたと言えよう。 (2)理化学研究所の電子ビーム源(ディスクトロン、600keV,1pps,〜1A、数ns)を用いて、指向性・エネルギ単色性の優れた電子ビームとバルク超伝導体との相互作用を実験した。使用した超伝導体は2種類である。ビスマス系紛体プレス形とイットリウム系溶融形(MPMG)の、平板および円筒状スーパートロンである。動作は真空(10^<-5>Torr以下)である。その結果、平板超伝導体による電子ビームの偏向相互作用は認められなかった。スーパートロンについては、電子ビームを打ちながら冷却(Field cooling)した場合に、zero field coolingと比べて、通過電子ビームのピーク値と半値幅に、わずかな減少が認められただけであった。以上の結果は、空間電荷効果によって、レンズの集束効果が減殺されたためであろう。今後は、空間電荷効果を弱める工夫をして、レンズ効果を確認する必要がある。そして、自由電子レーザ用ウィグラとしての可能性を検証する。
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