研究概要 |
平成3年度までに,CADシステムのための演繹データベースのプロトタイプを作成し,CADシステムにおいて演繹データベースの手法が有用であることを明らかにした. 平成4年度は,そのプロトタイプに対し,処理効率・ユーザインタフェースの点から改良を加えるための研究を行ってきた.さらに,平成4年度は,ゲノム情報を対象とした演繹オブジェクト指向データベースの構築についての研究も行った.ゲノムとは生物の遺伝情報の総体のことである.ゲノム情報においても,大量のデータが相互に複雑に関連しており,CADシステムと同様に,多種多様なデータを効率よく管理する機能と高度な検索機能が必要である. CADデータベースとゲノム情報データベースとは, ・階層的かつ複雑なデータ構造を持つ. ・形状データと機能データとを共に扱う必要がある. ・データ間の複雑な相互関係を検索する必要がある. という類似点があり、ゲノム情報のための演繹オブジェクト指向データベース構築で得た知見はCADシステムのためのデータベース構築に適用可能である. 以下に,具体的な研究成果を示す. 1.ゲノム情報処理の例として,DNAの塩基配列中の生物学的に意味のある配列の検索やDNAの2次構造の検索があげられる.本研究では,ゲノム情報のデータバンクであるGenBankに蓄積された,塩基配列に関する情報をデータベース化し、演繹データベースをこれらの検索に適用した.その結果,演繹データベースの有効性や問題点を明らかにすることができた.我々のシステムに固有の問題点についてはシステムの改良を行った. 2.演繹データベースの推論エンジンにオブジェクトを扱う機能を与えることを検討中である.第一段階として,GenBankのデータをオブジェクト指向の概念で整理し,商用のオブジェクト指向データベースシステムを用いてゲノム情報処理のためのデータベースを実現した.次の段階としてこのデータベースに演繹機能を追加する予定である.
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