研究概要 |
包晶化合物であったり、液相線と固相線がずれている化合物の場合には、望む組成の単結晶を融液成長法で得ることが難しいが、高イオン伝導性を有し、かつ電子伝導性がある銀・銅の欠陥型硫化物スピネルの場合は固体内原子輸送が可能であり、固相反応再結晶化の方法を用いて望む組成の単結晶を得ることが出来る。 この固相成長機構を明らかにし、さらに、物性測定用の欠陥型硫化物スピネル単結晶を得ることを目的として研究を行なった。 目的に沿って、初年度に於て欠陥スピネル構造をもつ銅・銀ーインジューム系の化合物(CuIn_5S_8)_<1-X>(In_2S_3)_*,(AgIn_5S_8)_<1-X>(In_2S_3)_X (ここで0≦x≦1)多結晶を固相/気相反応法によって作成した。イオン伝導率を増加させるため欠陥型スピネルのIn_2S_3の割合x(原子空孔数に対応する)を増し、4種類の組成のものを合成し、格子定数を測定した。格子定数は、xの増加(即ち、空孔の増加)に従い、銀の場合はベガード則に従い減少し、銅の場合は増加することが明らかになった。 最終年の第2年目は、表面ファセットの成長と粒成長に関係する物質輸送を中心に研究をすすめた。単結晶化の粒成長との対応づけを行うため、成形した粉末試料を、種となる単結晶(気相輸送法によって目的の組成のものを用意しておく)を接触させ固相反応により単結晶化を行わせる新しい方法を検討したが、表面ファセット観察より粒寸法の増加は見られたが、Mn-ZnフェライトやZnSeで見られるような単結晶化は観察されなかった。しかし、新しく水平ブリッジマン法で得た単結晶を固相反応により組成を均一にさせる方法が有効であることを明らかに出来た。xの差による金属原子のスピネル構造中での輸送特性を明かにする目的で、硫黄蒸気との固相反応による反応終了時間測定より、金属原子の拡散係数を得た。
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