1、実用系:(1)室内に放置した布団の質量を経時的に測定し、布団の吸湿量の環境温度・湿度への追従性を調べた。布団の質量は、環境湿度の増減に著しい影響を受け、約60分の時間差を持って追従し増減する。(2)前年度に考案した方法により、布団内、布団下に挿入した小布団の質量変化から敷き布団の水分率を推定した。布団乾燥機乾燥後の水分率は2.77%であった。畳系の場合、敷き布団内の水分率は1夜間使用後、11日間連続使用後、21日間連続使用後とも5.80〜5.85%で就床・離床の繰り返しに対し、外気の温湿度と関連してほぼ一定範囲で変動することが推定された。一方、敷き布団下面の水分率は1夜間で5.99%、11日後6.44%、21日後6.86%と、日数とともに増加を示した。ベッド系では、ベッドパッドあるいはベッドに敷き布団使用の場合とも、パッドならびに布団内の水分率は畳系と有意な差は認められなかった。パッド下面、布団下面の水分率は布団内の水分率と同程度で、畳系の場合のように連続使用により日数と共に増加する傾向は見られなかった。 2、モデル系:(1)同一質量のわたをガラス円筒の詰め、充填率を3倍(厚さ1/3)まで変化させて20〜35℃の温度条件下で透湿性試験を行った。充填率を変えても透湿性に顕著な差は認められなかった。(2)温度変化については20℃に比べ35℃では、透湿速度は20%程度加速され、就寝により水分移動が速まることが推定された。ただし、この場合装置も環境も同一温度条件にあり、布団と外気とに温度差のある実際の系とには環境設定に違いがあるので、今後実験方法を改善する必要がある。 万年床の問題点は、布団の潰れによる透湿性の低下よりも含気量と熱伝達距離の減少による保温性の低下、さらに畳系における布団下面の湿りが重要であり、環境の温度・湿度を快適に、特に湿度を低めに維持することが肝要といえる。
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