布団を万年床の状態で使用した場合の、布団の質量、布団内温湿度変化から、布団の吸湿量および布団内水蒸気移動等を調べた。1.敷き布団の温度変化:布団内の温度は、就寝後1時間くらいまでは上側(身体に近い位置)の上昇速度が速く、その後は下側でもほぼ同速度で上昇する。起床時の温度は上側敷き布団では皮膚温に近く、連日ほぼ一定値を示す。下側では経過日数と共に上昇し、上側との温度差は小さくなる。2.敷き布団内の水蒸気移動:布団内温度・温度の測定値から求めた水蒸気圧は、上側敷き布団内が就寝中常に高く、身体に近い位置から身体から離れた位置へと水分移動が続くことが明らかである。上下敷き布団内、畳内、室内等の水蒸気圧の関係から、不感蒸泄は万年床の初期には綿に吸着されるが、それ以後は敷き布団(主に上側敷き布団)を通って室内に放散される割合が大きくなることが推論できる。3.布団の吸湿:布団の吸湿量は布団の質量を電子天秤により測定しその変化から評価した。また、布団の絶対乾燥質量は布団に挿入して同時に吸湿・乾燥させた小布団の水分率測定により推定した。乾燥させた布団の質量は、万年床の初期には不感蒸泄と環境からの水蒸気とを吸着して増加を続ける。その後は、環境の温・湿度と関係してある範囲で増減するようになる。布団は必ずしも就寝中に吸湿し質量を増し、離床中に乾燥するとは限らず。就寝により質量を減じ離床中に増加する場合もある。それは、寝室の室外との密閉度、壁材等の吸湿性など寝室の温湿度環境の影饗が圧倒的に大きく、布団の吸湿は、万年床でも毎日押入に収納した場合でも大きな違いはないことが推測された。4.布団の潰れ:乾燥してよく膨れた布団の厚さは連日使用により双曲線的に減少し、3週間連続使用してもなお減少傾向を示す。2〜3週間の万年床の範囲では、布団の潰れは天日乾燥あるいは乾燥機乾燥で完全に回復できる。
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