JMTR炉において圧力容器鋼材であるAー533B鋼を573Kでフルェンス10^<19>n/cm^2までの照射を終了して現在クーリング中である。現段階では残留放射能の関係で実験開始を見合わせている(シャルピー試験等の機械的強度データに関しては、外部に依頼して少しずつ蓄積しつつある)。そこで本年度は同鋼の未照射材の透過電子顕微鏡観察を集中的に行った。その結果、炭化物であるセメンタイト相及び最終熱処理過程で比較的高密度の転位組織が発生し未照射材貞も複雑なミクロ組織を呈することが判った。これ等は照射下で形成されると考えられる微小欠陥クラスター或いは析出物の同定を困難にすることが予想され、本番における電顕観察用試料の作製の重要性が改めて認識された。この対策として3年度に購入した『ディスクグラインダー』『ハンディラップ』を用いて試料作製法の改善とその技術の習熟に努めている。 一方、本研究テーマに関連してニッケル・イオンを照射した純鉄、鉄ー銅合金の電子顕微鏡観察を実施しており、そ結果、1nm径以下の超微細欠陥クラスターの確認に成功している。同時に、これ等の欠陥クラスターの数密度(Nd)と平均径(Dav.)の積は照射に伴う強度の増分Δ(硬化量:Δσy)の2乗に比測するというと関係(Δσy^2=Nd×Dav.)が得られており、転位理論から導かれる微小欠陥の形成と硬化量の関係と一致していることが判明した。この実験は硬化量の評価に微小硬度測定を採用したが、これは一オン照射材においてもマイクロビッカース法(荷重=0.5g)により硬化(脆化)が比較的簡便に評価できるという点でポジュウムで発表した。また6月には同じくASTMの国際会議において上記イオン照射に伴う欠陥クラスターの発達過程の観察結果を報告する予定である。
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