研究概要 |
本研究では、消滅を目指した核反応断面積の測定に関する研究の一環として、まず、代表的なアクチナイド元素であるNp-237を取り上げ、昨年度において、これに関する核分裂反応断面積を数eVから10keV領域において測定した。本研究において得られた本年度の研究成果をまとめると: 1.上記、Np-237の核分裂断面積の測定、並びに明かとなった研究の成果をとりまとめ、現在、専門雑誌に投稿中である。 2.アクチナイド元素の消滅を目指す方法の1つとして、中性子吸収反応を利用し、核変換させて、短半減期核種、或いはより燃焼しやすい核種に変換する手法がある。一般に、低エネルギー領域では中性子吸収断面積が大きいため、その有効性が期待できる。本年度は、Np-237(n,γ)Np-238反応断面積測定を中心に実験的研究を進めた。Np-237の半減期は2.14x10^6年であるのに対し、Np-238の半減期は2.12日と極めて短いものである。本実験では、Np-237(n,γ)Np-238反応断面積を放射化法によって測定した。 3.京大研究炉(KUR)の重水熱中性子設備におけるMaxwell分布型の標準的な中性子スペクトル場を利用し、まず、Np-237(n,γ)の熱中性子反応断面積を測定した。Np-237試料の精製、準備は従来通りで、α線スペクトルの測定結果より、その不純物による影響を評価した。試料に入射する熱中性子束は、標準としてしばしば利用される金箔・金の放射化断面積(98.65±0.09b)によってモニターした。本実験の結果を表1に示す。従来値は何れも約10%以上も大きいことが分かる。 4.次に、共鳴中性子領域でのNp-237(n,γ)反応断面積として、その共鳴積分の測定を行った。原子炉の中性子減速エネルギー領域で標準的な1/Eスペクトルを示す中性子場において、金箔をモニターとして使用し(1550±28b)、厚さ0.5mmのカドミニウムカバーを付けたNp-237試料の照射を行った。共鳴積分の測定結果を表2に示す。代表的な評価済み核データの値より20%以上も大きくなったが、共鳴積分の定義として、エネルギー下限を0.5eVに定め、その補正を行えば641±61bの値が得られた。従来の評価値は、本実験値を満たしていることが分かった。
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