研究概要 |
生体膜の融合桟構を解明することを目的として,インフルエンザウィルスHAー2タンパク質をモデルとし,19〜20残基のペプチドを多種類合成し,膜融合活性,活性発現にかゝわる二次構造,フ-リエ変換赤外分光法(FTIR)によるペプチド分子軸のリン脂質膜内配向の決定等に関する研究を行なって次の結果を得た。 1.ペプチドの合成。インフルエンザウィルスHAー2タンパク質のNー末端部と相同のアミノ酸配列を持つ約15種のペプチドおよびその誘導体を固相法で合成した。 2.基本配列に相同なペプチドは膜融合活性を示すが、グルタミン酸ペプチドではそれはpH5以下,リシンペプチドではpH9以上で起り,中性では膜に結合はしても膜融合は起さない。膜融合活性の発現とαーヘリックスの形成とは相関している。 3.電荷に関して相補的な配置を持つグルタミン酸ペプチドとリシンペプチドが1:1に共存すると,本来活性のない中性pHでも膜融合が誘起される。いずれのペプチドも中性pHでは単独ではαーヘリックスを作らないが,共存するとαーヘリックが形成される。 4.リシンペプチドに,ATP,CTRなどヌクレオチドー三ーリン酸を共存させると,本来活性のない中性pHでも膜融合が起った。これはポリリン酸のような無桟リン酸でも同様である。 5.ペプチドのCー末端をアミド化しても融合活性は変らないが,Nー末端をアセチル化等で修飾すると活性が消失する。 6.全反射法を用いたFTIRにより,ペプチドαーヘリックスのリン脂質膜内での配向を調べると,活性の発現する酸性pH,活性のない中性pHいずれにおいてもヘリックス軸は脂質膜平面にほゞ平行の結果が得られた。活性のないNー端修飾体でも同様であった。
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