研究概要 |
ゼオライトや粘土質鉱物などの無機細孔内をミクロな試験管とみなして細孔内の特有な反応環境を利用して好ましい有機金属錯体の合成反応を進める(ship-in-bottle合成と呼ぶ)ことにより、細孔内に新しい自己増殖機能を有する反応場の分子設計を試みる。これにより鋳型合成反応場の分子設計のための基盤的知見を蓄積し優れた分子制御機能を有する固体物質相を創製することが本研究目的である。本年度は前年度の研究成果をもとにゼオライト細孔内の疑似的な“Solid-Solvent"の鋳型反応場を利用して、Rh_<6-x>Ir_x(CO)_<16>,CO_4(CO)_<12>,や[Pt_3(CO)_6]_n^<2->(n=3,4)などの新しい金属カルボニルクラスターの“シップインボトル合成"に成功し、その細孔内での存在状況金属クラスター骨格構造に関してEXAFS,FT-IRなどの分光的手段を用いて詳細な情報を得ることができた。[Pt_3(CO)_6]_n^<2->/NaYはNO+CO反応、水性ガスシフト反応に高活性を示した。さらに、光照射によりゼオライト細孔内のPt_<12>カルボニルクラスター錯体に波長選択フィルターを通したキセノンランプの照射をした場合水性ガスシフト反応の活性が30倍強の増大が認められた。これらNO+CO反応や水性ガスシフト反応(CO+H_2O→H_2+CO_2)はゼオライト細孔内でのPt_3(CO)_6ユニットの解離再結合を伴うクラスター骨格のダイナミックなRedox機構で触媒的に進行していることを明らかにした。さらに、グラファイトに担持した白金カルボニルクラスターのCO,NO反応ガス雰囲気下での走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いてその場観察を行った。興味あることにゼオライト細孔内の反応場と同様にNOによりPt_<12>クラスター骨格の解離に伴うサブカルボニルへの変換とCO下での元の白金クラスターへの再合成が進むことを反射FTIR分光法との同時観察で確認した。これらの研究は、ミクロポアー内の金属クラスターの精密設計への道を開くと共に、不均一系触媒への分子的アプローチのための開拓的成果になったと考えている。
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