研究概要 |
本研究代表者らにより実験的にはじめて実証された超励起分子の存在とその性質についての研究は、その後、電子線衝撃、シンクロトロン放射光を用いた本グループの実験を通じ、さらにその概要が明らかにされるとともに、現在国際的な競争の下にある。本研究はこのような背景から、放射光の連続的波長特性に加えてパルス・偏光特性を組合わせて駆使することにより、超励起分子の電子的エネルギー状態とその解離過程の詳細を明らかにすることを目的とするものであり、平成3-5年度において、計画調書記載の通り以下の研究を遅滞なく行った。 (1)放射光パルス特性を利用した高速応答遅延同時計数法を開発し、水素分子超励起状態を経由して解離生成する励起水素原子(n=3)状態からのバルマーα発光の時間分解スペクトルを、H_2およびD_2分子について測定することにより、これらの解離原子の軌道角運動量量子数分布の測定を行った。またこれらについて、より高分解能の励起波長の下でさらに超励起状態を詳細に特定した測定を行うことに成功した。また解離前駆体である超励起状態の電子的対称性を反映して、解離生成した励起水素原子からの発光強度が放射光偏光軸に対して異方性を示すことを明らかにした。 (2)CH_4,SiF_4,SiCl_4などの多原子分子について光吸収・光電離・光解離の各断面積絶対値の測定を行い、極紫外領域における光エネルギーのこれら諸過程への分配についての詳細な知見を得ることができた。 (3)分子超励起状態の中性解離によって生成する励起断片からの真空紫外発光の励起スペクトル測定法、ならびに分散発光スペクトルを放射光波長に対して連続的に測定することによる2次元発光励起スペクトル測定法を確立し、O_2,N_2,N_2Oなどの分子について、極紫外光解離に関与する超励起状態のポテンシャル構造についての詳細な知見を得た。
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